江藤慎一とその時代 早すぎたスラッガー (単行本)
「江藤さんの生き様、野球人として、人間としての姿を今に伝えてほしい」(王貞治) 「彼は、自分の人生をかけて打ちにいっとるよね」(張本勲) 「必ず振ってくる。力勝負を好む人やった」(江夏豊) 「夢見る慎ちゃんっていうあだ名がついとったんです。 だけど今は、それが全部実現しているじゃないですか」(江藤省三・実弟) 「ギターの弾き語りをする野球選手に初めて会った」(有藤通世) |
彼らを筆頭に、古葉竹識(故人)、杉下茂、権藤博、大島康徳(故人)、井手峻、真弓明信、加藤和幸、竹峰丈太郎、大西崇之、法元英明ら同時代を知る関係者、そして遺族の証言をもとに、江藤慎一という野球人の実像に迫るノンフィクション。
王・長嶋に並び立つ4番打者がかつて中日ドラゴンズにいた――
「これだけバットが振れるのは、巨人のON、うちの江藤をおいて他にはおるまい」漫画「巨人の星」の劇中でライバル・オズマ評として使われたのは、かつて中日ドラゴンズに在籍したスラッガー江藤慎一である。日本選抜で王、長嶋を押しのけ4番打者に座った強打者ながら、今では語られることの少ない野球人である。
全盛期の王貞治の三冠王の夢に立ちはだかり、セ・パ両リーグで初めて首位打者を獲得する実力者でありながら、ギターの名手、書は作品の域であったという異能の野球人。闘将と呼ばれながら、体罰を一貫して否定する理論派であり、いち早く野球学校を開校するなど先進的な発想の持ち主でもあった。
闘将、ONに比肩する実力者、初のセ・パ両リーグ首位打者、成績優秀、豪傑、ギターの名手、猛練習、エイトマン、理論派指導者、酒豪、書は作品の域、兼任監督、体罰否定、破産、人格者、極めて几帳面、六法全書に精通、夢見る慎ちゃん……江藤慎一とは何者だったのか?
『オシムの言葉』著者の木村元彦が、球史に埋もれた野球人の実像を、彼が生きた昭和の時代とともに描く。
< 著者プロフィール >
木村元彦(きむら・ゆきひこ)
1 9 6 2年生まれ。ノンフィクションライター。著書にストイコビッチと旧ユーゴスラビアをテーマにした『誇り』、『悪者見参』、ノーベル文学賞作家のペーター・ハントケとの対話を記した『終わらぬ〈民族浄化〉セルビア・モンテネグロ』、『オシムの言葉』(2005年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞)などがある。『オシムの言葉』は40万部のベストセラーに。著書に『蹴る群れ』、『争うは本意ならねど』『徳は孤ならず』(広島本大賞)『13坪の本屋の奇跡』近著にコソボ紛争を25年追い続けた「コソボ 苦闘する親米国家 ユーゴサッカー最後の代表と臓器密売の現場を追う」(集英社インターナショナル)